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映画を見た記録です。映画評ではなく、個人的な感想。
ネタバレは気にせずに書いていますので、未見の方はご注意ください。

『アメリカン・スナイパー』


映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイト

映画の日の日曜日ということで、最初の回だったが、シネコンのいちばん大きなスクリーンで、客は5分程度の入り。わたしの隣は、ご年配の夫婦だった。

戦争映画はあまり好きじゃないが、クリント・イーストウッド作品なので、きちんと劇場で向かい合うべきだろうと思って見に行った。

いつもながら、画面には隅々まで緊張感がただよい、このカットでなにを伝えたいのか、とても明確だ。この明晰さ、これがイーストウッド作品なのだと思う。

戦場には明らかに適応し、いきいきしている男が、平和な家庭に戻ってくると、まるで幽霊のようで(実体があって魂が抜けているのだから幽霊とは逆だが)、ものすごく浮いて見える。そして、その表情を見せた後、妻が「帰ってきても、あなたの心はここにない」と悲しそうに言う。

退役して、娘と馬を見ているシーン。おだやかで自然な笑みが出ているので、ああ、ずいぶん精神的にも回復したんだな、と思うと、その後妻が「努力して心も帰ってきてくれた」というようなセリフを言う。

ラスト近く、日付が突然出てきて、あー、これはこの日になにかあったのか、と思っていると、なにやら不吉さが強調され、その後、テキストで主人公がこの日に亡くなったことが伝えられる。

やたらと言葉で説明するほどダサくはないのだが、絵で見せる部分とセリフの部分がしっかりかみ合っていて、映画らしい映画なのだけど、とてもわかりやすい。このあたりが明晰と感じる所以かなぁ。

ひとり殺すと犯罪者、10人殺せばシリアル・キラー、100人殺せば英雄だ。

分厚い壁と、涼しげで美しい幾何学模様のタイルの家々。町は瓦礫となり、屈強な兵士たちがどかどかと押し入ってきて、銃をつきつける。

女子供も戦いの中にあり、敵の狙撃手が妻子といるところも描かれる。

遠く離れた国で戦い、戦争の影など見られない繁栄の国に戻っていくものと、日常すべてが戦いの中にあるもの。その対比があざやかだ。

個人として、誠実に生きようと努力し、家族への愛情も最後まで失わなかった主人公がたどった凄惨な運命を考えると、ラストの葬儀のシーンでこれでもかと映し出される星条旗が、そらぞらしく不気味に見える。

もっと正直に言えば、米軍もクソだし、星条旗に象徴される愛国心とやらもクソだし、女性や子供に手榴弾を投げさせ、自爆攻撃させるアルカイダもクソだし、全編胸くそ悪いことこの上ないのに、最後に残ったのは悲しみだけ、という高みの見物をしている自分もクソだ。

無音のスタッフロールの中、帰っていく人も多かったが、最後まで画面に流れる文字を見て、客電がついてから出て行く人々は無言。それまで沈黙を強いられていたわけだから、終わって出るときには連れとあれこれ話をするのがふつうだから、これはとても印象的だった。