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映画を見た記録です。映画評ではなく、個人的な感想。
ネタバレは気にせずに書いていますので、未見の方はご注意ください。

『花、香る歌』

映画

hanauta-movie.jp

またまた、U-next で。

最近、ぜんぜん劇場行ってないなー。

 

リュ・スンニョン*1とスジ! しかもテーマがパンソリですよ。

わくわくして見始めたのだが、途中からイヤな予感がわきおこり、ラストまで見たら、その予感どおりだったという、寂しい結末に。

 

若い娘が、中年男に恋しちゃう、というのは、とくにへんな話ではないし、わたし自身も中高生のころのアイドルはクラーク・ゲーブルだった。

しかも、オトナの渋い魅力あふれるリュ・スンニョンなので、そういう脚本にするのも自然なのかもしれない。

でも、それをいま描くと、おっさん向けファンタジーになってしまうのよね。

はっきり言って古い。

2015年の映画なんだから、そこは意識してほしかった。

 

途中まで芸道ものだったのに、師匠と弟子との間で、見交わす目と目が雄弁なプラトニック・ラブが描かれ、そして、それが引き裂かれてクライマックス、っていうのでは、なにがテーマなのか、ぼやけてしまう。

 

権力者の前で歌い、「わたしはキセン(妓生)ではありません」と主人公が言うシーンがある。

女性の歌い手が禁じられていた中で、歌を聞かせるために、キセンに紛れ込んで宴席に出たというシーン。

身分を偽るのではなく真実を述べ、歌い手なのだ、と宣言するところだが、なんだか「芸は売るが、女を売るわけではない」と言っているように見えた。

 

権力者もその芸に感心はするのだが、結局のところ、「女」という部分を買われてしまう。

 

この悔しさ、苦悩がさっぱり描かれず、愛するお師匠様と引き裂かれて、好きでもない相手の妾になる悲しさだけが表面に出ているというのが、いちばんいただけない。

 

しかも、芸道というテーマに関しても中途半端。

 

スジは好きな役者だし、声もいいので、それなりに楽しくは聞けた。

だが、たかが半年くらいの訓練で、聞き手を感動させるところまでは無理というもの。パンソリをなめすぎでしょう。

たいしたことのない芸でも、映画の中でみんなが感動していたらそういうものとして受け止める、というのがお約束だが、アイドルとしてはがんばりました、というコンテクストがなければ、成り立たないレベルだった。

 

パンソリがテーマの映画というと、どうしても名作『西便制』を思い出すが、こちらは本物のパンソリの歌い手が主演している。客を呼ぶにはアイドルのほうがいいに決まっているが、この配役で、吹き替えもしなかったという時点で、それだけのものになってしまった。

 

ちなみに、『西便制』の中の有名なシーンで、くねくねした道を、だれに聞かせるというわけでもなく、師弟が楽しそうにパンソリを歌い踊りつつ歩く、という長回しがあるのだが、この映画にもちらっと似たシーンが出て来る。とくにストーリー上必然性があったわけでもないので、『西便制』へのオマージュかな。

 

とはいえ、リュ・スンニョンはやはりすばらしい。

とくに杖刑を受けて痛みに耐えるシーンと、権力者の囲われ者になって去っていく弟子、しかも自分も愛情を抱いている相手に対して、「ママ」という王族への敬称を使って、ていねいな言葉で別れを述べるシーンは圧巻だった。

 

大院君役でキム・ナムギルが出てくるのだが、持ち前のセクシー・ビームはほとんど見られず。引き立て役としても、もうちょっと男性的な魅力を出すシーンがあってもよかったのに。

 

美しい朝鮮の風景も見どころで、全体にテンポもよく、ぜんぜんダメな映画ではないだけに、もったいない部分が目立ってしまったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

*1:リュ・スンリョンと表記してあるところが多いが、実際の発音は、これに近い。こっちのほうが違和感ないので、今後もこう書きます