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映画を見た記録です。映画評ではなく、個人的な感想。
ネタバレは気にせずに書いていますので、未見の方はご注意ください。

『お嬢さん』

映画
 
TOHOシネマズシャンテにて。
 
TOHOシネマズ系でやっているのだが、宇都宮では上映予定なし、と劇場に問合せたらはっきり言われ、もうしょうがないので東京で見た。
見巧者の友人がはまり、絶賛の嵐、ということで、期待は大きかったのだが、なにせ前の晩によく眠れなかったので、かなりくらくらした状態で見に行った。
 
実はこの映画が韓国でやっているときにちょうどソウルにいて、見ようかなーと思ったのだが、内容が複雑だと韓国語のヒヤリングが厳しいと思って見なかった。
なので、余計気になっていたんだよね。
結果からいうと、字幕なしで見ても理解できなかった可能性高いので、そのとき見なくてよかったと思う。
 
18禁なのだが満席。
若い女性もけっこう多い。
このへんはほんと東京だと思う田舎のネズミ。
 
一部、二部、三部と視点がかわり、そのたびに新しい事実が提示されるのだが、その前に「あれ?」と思った部分がきちんと回収されて、最後はかなりすっきり終わる。
パク・チャヌクにしては、わりと後味いいほうかも。
 
植民地時代の朝鮮の金持ちが、日本趣味と西洋趣味を思い切り表現して建てた家。そこがまずこの映画の見所だろう。
着物、ドレス、どれもきっちり表現として作られていて、衣装もすばらしい。
猥褻な稀覯本を朗読する秀子の、ものすごく誇張された日本髪も含めて。
 
日本人役(偽物も含めて)をすべて韓国人の俳優が演じていて、発音に難あり、とする意見も見受けられたが、わたしはほとんど気にならなかった。
朝鮮なまりの日本語は身近なものだからかも。
いちばん日本語が流暢であるべきムン・ソリは、確かにあの程度では問題なのかもしれないが、性器の名称をけろっと口に出すシーンを見ると、日本語ネイティブの役者であの味が出たかどうか。
 
ムン・ソリは出ているのをぜんぜん知らなかったので、登場した途端、あっと声を出しそうになった。
朝鮮の金持ちに買われる(妻ということだが、実態は道具)日本人妻がムン・ソリかー。
ただのお人形さんではなく、複雑な内面を感じさせる女優だから、とてもいい配役だ。
美しい姉(秀子の母)より若干容貌は落ちる、と自分自身を語るセリフが、成長した秀子が言うのとまったく同じ。
この家における役割も同じ。
とりすましたようで、どこかタガが外れているような言動も、相似形だ。
この繰り返しが、秀子のどこにも逃げ出せない状況を強調している。
 
元いた朝鮮人の妻を形式上は離縁して、日本人の妻を新たに迎えるが、家の中をとりしきるのは元の妻で、床もともにしている、というグロテスクな状況。
キム・ヘスクが、元妻の役を和服を着て無表情に演じるのだが、最初はただの使用人かと思っていたら、そのような事情があとで語られ、最初のころのシーンが頭によぎって、怖さ倍増である。
 
偽物ばかりが、三つ巴、四つ巴でだまし合う。
結局いちばん虐げられたものどうしが手を取り合うと、見事に逆転してしまう。
映画のストーリーはそういうことなんだけど、日本人と朝鮮人、金持ちと貧乏人、男と女、いろんな位相が複雑にねじれていて、ストーリーはそれを見せるためにあるような感じ。
 
支配階級である日本人になりきりたい朝鮮人の金持ちの上月(チョ・ジヌン)、日本人の伯爵になりすまし、金持ちの令嬢をものにしようというハ・ジョンウ、男たちは自分が演じていること、偽物であることに自覚的だ。
ちょっといかれた令嬢のふりをして脱出を画策する秀子(キム・ミニ)、泥棒で詐欺師であることを隠して、忠実な使用人を演じるスッキ(キム・テリ)、女たちはどこかはみ出した自分の状況をやすやすと受入れ、演技のはずが演技ではなくなってくる。
そりゃ、自分でも演じているのを忘れたほうが強いよね。