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映画を見た記録です。映画評ではなく、個人的な感想。
ネタバレは気にせずに書いていますので、未見の方はご注意ください。

『王の涙 イ・サンの決断』

映画

movies.yahoo.co.jp

U-next で。

Netflix に移って、こちらは解約したのだが、「31日間無料で見られまっせ~」というリトライ・キャンペーンのご案内が来たので、利用することにした。

 

原題は「逆鱗」。

こっちのほうがずっとかっこいいじゃないの。こういうクソ邦題、ほんと勘弁してほしい。

正祖(イ・サン)の話は、悲劇的な死を迎えたその父も含めて、いったいどれだけ映像化されてるんだろう、というくらいベタなテーマだが、これはなかなかよいでき。

まず、抑えた色調の映像がスタイリッシュ。舟の場面での水の描写、ほの暗い宮殿の中など、実に美しい。

史劇を見るときは、衣装が楽しみなのだが、これも端正でよかった。

 

(画像出典:U-next 『王の涙 イ・サンの決断』

 

亡くなった祖父、英祖の若い妻(貞純王后 ハン・ジミン)は、ヒョンビン演じるイ・サンからすると、要するに祖母ということで、見た目つやつやなのだけども「お祖母様」と呼び礼を尽くすのが、なんとも気持ち悪い。

祖母の立場を利用して、あいさつに来たイ・サンの前で素足を出して幼い宮女に爪を切らせたり、ねちっこくいやがらせするのが、王といえども立場の弱い主人公の屈辱感を感じさせる。

ハン・ジミンは、ドラマの『イ・サン』では、ヒロインだったのが、今度は敵役である。思ったより貫禄があってよかった。

チョ・ジェヒョンの汚れぶり、老けぶりは、絶対楽しんでやってるでしょ、という感じ。

チョン・ジェヨンは、内侍(宦官)らしい青白くへにゃっとした雰囲気でありながら、脱ぐと鍛えまくって筋肉もりもりという二面性をうまく演じていた。

筋肉といえば、ヒョンビンは冒頭でいきなり腹筋をご披露している。

お気に入りのパク・ソンウンもホン・グギョンの役で出ているし、役者的には、見どころ満載である。

あとおもしろかったのが、武器の描写。

この時代の銃は火縄銃で、「雨の日には役に立たない、弓で射られて終わり」と、政敵の将軍に最初の方で言わせておいて、最後のクライマックス、襲撃の場面では、まさに雨の中で導火線の火が消えてしまい、鉄砲隊が次々やられてしまう。

あらやっぱり、あのじいさんの言ったとおり、ホン・グギョンの鉄砲隊はあかんのか、と思っていると、たくさんの障子戸をばたばたと一気に開くしかけがあり、部屋の中に隠れていた短銃の射手たちがいっせいに姿を見せ、襲撃隊をなぎ倒す。

殴られて目が腫れるとか、傷の作り方、血糊の吹き出し方がなかなかリアル。

リアルといえば、閉じ込めていた米びつを壊して、思悼世子(主人公の父)の死骸が現れるシーン、腰のあたりが茶色くなっていて、そりゃあ、糞便で汚れるのは当然だけど、それを絵で見せると、やはり無残さが際立つ。

この暗殺事件に関わっている全員が、なにやら若い頃からの因縁がある、というのも、ご都合主義といえばご都合主義なのだが、回想シーンの子役たちがいい感じなので、鼻につくこともなく見られた。

『中庸』の一節を、老論(ノロン、イ・サンの政敵)の高官たちとのかけひきに使い、最後にまたモノローグで使うとか、劇中のいろいろな要素がきれいに響き合っていて、ウェルメイドという言葉がふさわしい映画だ。

 

王の涙 -イ・サンの決断- [DVD]

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